講演に聞き入る参加者

1月21日、民進党栃木県連は宇都宮市内で『民進党とちぎ政策研究会』を開催した。

第4回目となる今回は、慶應義塾大学経済学部の井手英策教授を講師とし、参加者約70名が今後の社会保障の在り方などについて学んだ。

井手氏は、財政社会学を専門とし、総務省や全国知事会等の各種委員のほか、朝日新聞論壇委員なども歴任。民進党のマニフェスト制作の中心的役割も果たした。

「なぜ私たちは引き裂かれるのか・・分断大国ニッポンが生まれ変わるための社会保障」と題した講演の冒頭、井手氏は『働かざるもの食うべからず』の『働かざるもの』は本来、『貴族』を意味する、との語源を紹介した。ところが現在の日本は、勤労せずに他人の厄介になることは恥と受け止める風潮があることに、「この社会の深い闇がある」と指摘した。

過去の可処分所得や家計貯蓄率、さらには経済成長率の推移を示したうえで、「経済成長に頼った自己責任型の社会では今後やっていけない」と問題提起した。

そのために井手氏は「全ての人々が利益を得られるような社会を目指すこと」とし、「税で未来の希望を作ることが必要」と訴えた。

欧州並みの消費税率にすることで、「医療、介護、教育等のサービスを誰もが平等に受けることができ、また、将来の不安から解放されることができる」と説いた。

また、井手氏自身の生い立ちを披露し、「生まれたときの運・不運で一生を決めさせては絶対にいけない」とし、「人間を助けるのがいい社会ではなく、助けられる人間がいない社会をつくるべき」と訴えた。

井手氏は、安倍政権が3度にわたり生活保護費の引下げを行うことにふれ、「最低限の生活を保障するのが“生活扶助”。この領域をどうしてせばめようとするのか」と憤慨し、「誰もが堂々と生きられる『尊厳ある生活保障』と人間の最後の自由の砦である生活扶助に住宅の保障を加えた『品位ある命の保障』が必要」と力説した。

講演する井手英策慶應大学教授

講演する井手英策慶應大学教授